前のページ 戻る 次のページ

【1ページからの続き】
C 南摩ダム予定地の地元では、室瀬地区の住民が絶対反対の姿勢を堅持している。それを無視して、一方の水没予定者と補償交渉に入ろうというのは、許し難い行為である。
D「水没予定地住民から生活再建措置を急いで欲しいという要望が出ている」ことを、南摩ダム建設を先行する理由に挙げているが、水没地域の人々は、時代遅れの事業を糊塗しようと計画が変更されたことによる長期化や、無定見な行政当局の態度に翻弄され、永年苦難の生活を強いられ、精神的にも経済的にも多くの損失を蒙ってきたのである。生活再建を急がざるを得ない事情は、こうしたことに由来するのである。急ぐべき生活再建の手当は、ダム建設と切り離し、国と公団と関係自治体の責任において進められるべきである。
E 現在、建設省・公団が設置した思川開発事業検討会において同事業の是非が議論されている。その議論の最中にもかかわらず、建設省・公団が南摩ダム建設の先行を発表するのは、検討会に対する背信行為であり、住民の意見を広く聴くという建設大臣の国会答弁にも反し、かつ新河川法の精神に悸る非民主的行為である。
F 35年前の計画当初はともあれ、時代を経た現代においては、この事業の必要性はきわめて希薄なものとなっている。膨大な金銭的負担を住民に強いるむだな公共事業の典型である。のみならず、財政負担に加えて多くの自然を代償に払うもので、とうてい地元住民や県民の同意を得られるものではない。今回の方針転換の発表は図らずも、思川開発事業が破綻したことを物語っていると言わざるを得ない。
 以上の理由から私たちは、この発表に対して憤りを持って強く抗議すると共に、この事業のすべてを直ちに中止するよう申し入れる。(以上)